未来の住環境を変える水素エネルギー
Oct, 2020






 家での生活になぜ水素エネルギーが必要なのか。


家で使っている電気の多くは発電所から送られてくるものです。火力や水力、原子力などの発電所で生産した電気を遠くまで送るためには、まず高圧の電気を変電所に送らなければなりません。変電所では家庭で使用できる電気を配電変圧器から供給します。発電で生産された電気は20kV前後ですが、電気は電圧が高いほど電流が遠くまで行けます。また、高い電圧で電気を遠くまで送るほど途中で損失される電流量が少なくなりますので効率が高いです。 


しかし、様々な方法を使っても発電所で生産した電気が送電線を通って一般家庭まで到達する間にはやはり電気の損失が発生します。もし各家庭で一定の電気が生産できれば、巨大な発電所の設備や変電所、変圧器、送電塔、電柱などの施設の運用にかかるコストを削減することができます。また、上記のような送電時の損失も最低限に抑えることができます。



出所  |  The NEED Project(National Energy Education Development Project)


家庭で燃料を使用する発電機で電気を生産することもできますが、太陽光および太陽熱エネルギー、風力エネルギー、地熱エネルギーなど環境に優しい再生可能エネルギーを活用して発電すれば、エネルギーの損失も減らせるし、環境問題の解決にも役立つと思います。代表的な例が太陽光発電です。太陽光発電機を設置している住宅が増えていますし、太陽光発電のコストも徐々に安くなっているため、今後さらに増加していくと考えられます。


太陽光住宅は太陽光発電を利用して生産したエネルギーを2次電池に貯蔵しておいて必要な時に使います。その時に2次電池の代わりに水素をエネルギー貯蔵用として利用すると、環境に優しい太陽光グリーン水素の再生可能エネルギー住宅となります。太陽光で生産された電気で水素を生産して貯蔵しておいて必要な時に水素燃料電池を利用して電気を使う仕組みです。  





出所  |  hydrogenhouseproject.org

水素の形で電気エネルギーを貯蔵する方法は2次電池とは違って化学変化に影響を大きく受けませんので、長期間貯蔵しても効率が下がることを防止することができます。また、燃料電池で電気を得た後には公害物質ではなく純粋な水だけが残りますので環境に対する弊害もあまりありません。



出所  |  ラザード(Lazard)


太陽がある昼間に電気を生産して夜にすぐ使えます。また、日照量が多い夏に電気をたくさん生産して水素として貯蔵しておいて日照量が少ない冬に使えることもできます。それだけではありません。水素自動車の使用が活性化されれば貯蔵しておいた水素を水素自動車の燃料として使えます。そうなると、日常生活で使用するほぼすべてのエネルギーが自給自足できます。太陽エネルギーを家に貯蔵しておいて、暖房や料理、家電製品、照明、自動車の燃料などに無制限に使用でき、公害物質や温室ガスも排出しない。それこそ我々が求めている水素経済の本当の姿ではありませんか。


 各国における水素エネルギーハウスプロジェクトの現況 


米国の水素ハウスプロジェクトは、ニュージャージー州・ぺニントンにある太陽エネルギー水素オン・オフグリッド居住地です。ここは商用として許可されているところです。2006年にマイク・ストリツキー氏は居住する太陽エネルギー水素ハウス「ハイドロゲンハウス」を開発し、世界的に有名になりました。ハイドロゲンハウスプロジェクトは水質浄化のためのろ過機能を含む「OFF-GRID BOX」エネルギーシステムを持っている本物のグリーンホームです。この住宅が他の太陽エネルギー住宅と異なるところは、グリッドがOFFになってもシステムを最大限に活用する電力を持っているところです。この住宅はクリーンな再生可能エネルギー技術を使用するだけではなく、副産物として純粋な水と医療用酸素だけを生成する環境に優しい住宅です。

イギリス・デヴォンではヨーロッパ独自の太陽エネルギーハイドロゲンハウスプロジェクトを行っています。当プロジェクトは太陽エネルギー・水素電力で必要なすべての電力を生産する単一住宅です。太陽電池アレイで電気を生産し、水素貯蔵所に電気を無期限貯蔵することができます。当プロジェクトハウスは、最終的に計画許可を受けるまで6年半の研究と開発が必要でした。さらに大きい市場に適用するためのテストケースになると期待されています。

イタリア・プレドーイでは二酸化炭素を排出しないエネルギー自立型水素住宅をオープンし、ブルーニコのGKNが開発した水素システムを取り入れました。当システムは生産された電気エネルギーを水素に変換して貯蔵し、必要な時に電気と熱に再変換します。山岳地帯にある当住宅では、水力タービンから得た電力を利用し水を電気分解して水素を生産し、さらに金属粉末水素貯蔵技術を使用して貯蔵します。建物に必要なエネルギーは燃料電池からもらいます。 

金属水素化物はバルク金属に原子状態で水素を貯蔵し、他の貯蔵方法とは異なって物理的に固体となります。金属水素化物は大量の水素を貯蔵するという長所を持っていますが、低い重量貯蔵密度によって車両用水素貯蔵物質としての使用には制限があります。しかし、住宅では大量に安全に貯蔵する方法として活用できます。

韓国・国土交通部は2019年10月10日に国務総理が主宰する国政懸案点検調整会議で一つの都市で水素の生産・貯蔵・輸送・活用がすべて行われる「水素生態系」を備える「水素モデル都市推進戦略」を発表しました。水素モデル都市には水素をエネルギー源とする共同住宅(燃料電池440㎾級を設置)、商業ビル(100㎾級)、統合運営プラットフォーム(センター)、水素配管、都市ガス抽出器などが設けられます。 

モデル都市の共同住宅団地や個別建物は水素を冷暖房、電気などのエネルギー源として使用します。都市内の水素エネルギーベースの交通システムも構築されますが、そのために複合乗換センター、駐車場、バス車庫地などには水素自動車と水素バスの充電スタンドが設置されます。統合運営センターは、該当のモデル都市で行われる水素供給・貯蔵・輸送現況、安全性などをリアルタイムでモニタリングし管理します。爆発の恐れのある水素をエネルギー源として使用するために安全対策も講じられます。事故が発生するとシステムが自動停止する安全制御システムの設置が義務化されます。

韓国・国土交通部は水素モデル都市の造成完了時期を2022年と予想しています。ロードマップによると、モデル都市事業から2030年までの「水素都市拡大期」には自治体(市・郡・区)の10%を水素都市にシフトすることが韓国政府の目標だそうです。また、水素自動車と水素バスもそれぞれ14万750台と2100台が運行されます。





水素受給の状況に基づいて都市内の3~10km2範囲をモデル都市として指定。 
*水素の供給·貯蔵·輸送現況、安定性などをリアルタイムでモニタリング·管理

出所  |  韓国・国土交通部 



水素エネルギーを利用する住宅を建築する際に、太陽光、水力、風力など様々な再生可能エネルギーを活用することもできますが、もっと活性化できるのは地域条件に自由なものが太陽光発電です。それにトータルエネルギーソリューションカンパニーであるQセルズに水素都市事業は、注目すべき事業分野です。太陽電池アレイやソリューションの供給を主導することもできますし、水素事業に直接参加して水素燃料電池もしくは水素分解および貯蔵装置を開発・供給することもできます。さらに、水素貯蔵ユニットが開発できた場合は水素燃料の流通も可能となるでしょう。 


住宅とその住宅での生活は我々の人生において大きな部分を占めていますので、住宅での水素エネルギー利用は社会経済的に大変重要な課題です。また、水素エネルギー関連事業はある一つの分野ではなく、生活全体に関わるため、今後の水素経済発展の可能性はさらに広がります。


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